少年少女人物日本の歴史 (8) (小学館版学習まんが)

紫式部の生涯のｴﾎﾟｯｸとなる部分と藤原道長の権勢をうまく絡め合はせてのｽﾄｰﾘｰ展開がうまくつくられてゐます。最初の所で、受領だった父･藤原為時の越前国府への赴任に同行した生活の場面を描いて行く事で、当時の中流貴族の様子や才女･紫式部の片鱗を浮かび上がらせてゐます。又、摂関政治の頂点に立たうとする藤原道長の動向と道長の娘である中宮彰子に宮仕へする紫式部の同時代性が氣づかせられる豊かな宮廷描写は大変秀逸です。最後の資料編の所では、源氏物語の粗筋とﾎﾟｲﾝﾄを分かりやすく解説してくれてゐます。その中で、主人公･光源氏が幼少時に受けた｢天皇でもない臣下でもない身となる｣予言は的中する事になる流れや宮廷文化の粋を体現してゐた作品の完成度も読み解いてゐます。一人の人物を通して時代のｲﾒｰｼﾞを浮かび上がらせる展開、構成の力は見事なものだと私はとても感じ入りました。